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第2574日目 〈綾辻行人『迷路館の殺人』を読みました。〉 [日々の思い・独り言]

 <館>シリーズ第3作、『迷路館の殺人』(講談社文庫)を春雨そぼ降る今日、4月1日夕刻に読了。この月日に因んだ作為ではなく、あくまで偶然の一致に過ぎぬ。もっとも読み始めた当座はなんとなく、4月1日に読み終えられたらいいな、ぐらいには考えた覚えもあるけれど。どうせなら4月1日に読み始めて4月3日午前に読み終わる方が、この作品の場合は最上だったのかもしれないけれど、現実的には到底不可能事なので却下しよう。
 舞台は地下に建造されたギリシア神話さながらの迷宮を擁す<迷路館>である。建築主が中村青司、館の主人が推理小説界の大御所、宮垣杳太郎、その還暦祝いに招かれた4人の作家と1人の評論家、編集者とその妻(妊娠中)。そうして訪問客のひとりとしてひょっこり登場した名探偵、島田潔。この四者が集うたおよそ建築基準法を無視した迷路館。役者は揃い、舞台は整った。これで何事かが起こらなくては嘘だ。斯くして(すべての読者が望むように)館の薄闇のなかで血まみれの見立て殺人の幕が切って落とされる……。
 前作『水車館の殺人』が全体的にはオーソドックスな作劇であったのから一転、本作は最後の最後まで「謎」、「謎、「謎」のオンパレードで、終始著者の魔法に翻弄されっぱなしであった。一旦は真相解明となったものの、最後の章でもう一つ、作品を最初から読み直すことが推奨されるようなドンデン返しが待ち構えていようとは、思いもよらなんだ。もうわたくしのような未熟な読者は、「マジっすか!?」「やられた!」と天を仰いで叫ぶより他ないのである。地団駄を踏む? うん、まぁそういうてもよいかもな。巻の中葉で館のからくりがわかり、真犯人にもおよそ見当が付き、ワープロに残された文書の真相にも気附けた──それはだいたいに於いて当たっていたのだが、まさかそれを簡単に飛び越えた事実が用意されているとはなぁ。文庫の裏表紙に「徹底的な遊び心」とあるが、それを極限まで突きつめれば斯くも周到かつ大胆な伏線の張り巡らされた、読んで仰天、読み返して仰天な推理小説ができあがるのだ。綾辻行人、凄まじき。
 ──告白すれば『迷路館の殺人』を読むつもりはまったくなかったのである。当初は『十角館の殺人』だけで<館>シリーズは済ませるはずだったのに、その面白さと謎解きの妙、中村青司が建てた館の魅力に取り憑かれて『水車館の殺人』に手を伸ばし、その最中にこれも面白そうだな、と『時計館の殺人』と『暗黒館の殺人』を購い、第2作の読書も途中まで来るとさすがにそこから一気に第5作へ飛ぶのも気が引けて、間を埋めるようにして第3作の本作と第4作の『人形館の殺人』を買ってきたのである。そうして本作を読んでいる途中には、もうこうなったら<館>シリーズを全部読んでしまえ、と思い立ってしまったのであった……即ちそれは、<未読小説(文庫に限る)読破マラソン>のコースが大きく変更されたことを意味する。どんなに早くても、6月中旬あたりまでは綾辻行人の華麗なるマジックとロジックにどっぷりと浸かっていることは必至だ。
 かつて著者は島田荘司『【改訂完全版】斜め屋敷の犯罪』の初刊(講談社ノベルス)の巻末余白に「島田荘司のファンになります」なる文言を記した由。それに倣えばわたくしは本稿にて、『迷路館の殺人』がダメ押しになって綾辻行人のファンになります、と公言しておこう。◆

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